TPR事件とPGM事件
2025.10.09TPR事件
TPRという会社が多額の繰越欠損金を抱えた100%子会社を吸収合併し、同じ名前の子会社を設立して、合併で吸収した雇用や事業すべてをその新会社に移管しました。これに対して、税務当局は、合併の目的が繰越欠損金の承継という租税負担の回避のみで、その目的以外に合併を行う理由がないとして、組織再編成に係る行為計算否認の権限を行使して、合併行為を否認しました。地裁・高裁も当局の行為を容認し、最高裁は、納税者の上告を不受理としで判決が確定しました。
PGM事件
PGMという会社の100%子会社A社は事業を会社分割でB社に移転して欠損金を残した休眠会社になった後に、兄弟会社C社(PGMの100%子会社)に吸収合併され、その後C社は兄弟会社のD社(PGMの99.999%子会社)に吸収合併され、欠損金は結果的にA→C→Dと移転しました。
これに対して、税務当局は、A社は休眠会社で事業合併にならず、繰越欠損金の承継という租税負担の回避の目的以外に2段階合併を行う理由がないとして、組織再編成に係る行為計算否認の権限を行使して、2段階合併行為を否認しました。
地裁・高裁は、100%支配下の合併では、適格性も欠損金承継も、従業者引継要件及び事業継続要件が必要とされておらず、A→C→Dの2段階合併行為程度のことは、一般的で合理的な手順・方法と言え、通常では想定されない不自然な行為などではなく、税負担の減少目的を持つことをもって不当性要件に該当するなどと解することはできない、として国を敗訴としました。なお、国は最高裁に上告しています。
学識経験者からの批判
TPR事件判決については、学者専門家からの多くの批判があり、PGM事件判決は、それらの批判を取込んでおり、両判決は、相当に真逆な内容になっています。
TPR事件判決での、欠損金の承継へのこだわりを異常視する観点、組織再編税制への法文上求められていない事業の移転や継続を求める過剰な趣旨解釈の傾向からの離反と予測可能性を確保する文理解釈への立ち返り、正常化がPGM事件判決でなされているとの印象です。